コラム91:ELC千葉船橋始動!最期は真心の輪の中で迎える-幸せを実感できる社会を創りたい

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  • エンドオブライフ・ケア
  • 緩和ケア
  • 選ぶことができる自由

NPO法人千葉・在宅ケア市民ネットワークピュア代表

藤田 敦子さま

(第78回生、認定エンドオブライフ・ケア援助士、認定ELCファシリテーター)

痛みと苦しみの中で迎えた家族の死

 がん末期の家族が最期を迎えたのは、痛みの原因を調査するために検査入院した病院だった。手術後わずか3か月で痛みは起こった。がん転移による痛みとわかるのに2か月が経過し、既に歩くと激痛が襲うような状態であったが、十分な緩和ケアを受けられていなかった。

 

 すがる思いでたどり着いた緩和ケア科の医師から「こちらで患者を1週間お預かりしますから、ご家族は少し休んで下さい」と、疼痛を和らげる薬の調整と共に疲弊した家族を休ませる為のレスパイト入院が提案された。ところが翌日から高熱が出始め、最後の2か月は個室に移り、私が泊まり込んで最期を看取った。「家に帰りたい」と願う患者と家族の願いは、叶わなかった。

 

 「何故、家に帰る事ができないの?家に来てくれる医師や看護師、そして助けてくれる人はどこにいるの?誰か助けて」。苦しみから会話を拒絶した患者と二人だけの病室で、私は「臨床看護11 緩和ケア-看護の考え方と方法-」を握りしめていた。その本には、緩和ケアは身体的痛み、精神的痛み、社会的痛み、そしてスピリチュアルな痛みに対するケアであり、在宅ホスピスケアや家族・遺族ケアも書かれていた。

 

地域コミュニティの場でのホスピスケアをーNPO法人2001年誕生

 家族の死後、在宅医療を先駆的に行っていた医師と二人で、「最期まで自分らしく生きたい、暮らしたい」を掲げたNPO法人を2001年に立ち上げ、千葉大学福祉環境交流センター(広井良典教授)を拠点に、千葉県を巻き込み、医療と介護のがん緩和ケア資源調査、在宅緩和ケアフォーラム、在宅ケア公開講座、在宅緩和ケアボランティア養成研修、在宅ホスピス電話相談等を始めた。

 

 当初から対象は、がん以外の難病、医療的ケア児や障害をもつ人、高齢者等、在宅療養を望むすべての人にした。痛みや苦しみを持つ人はがん患者だけでなく、在宅医療の対象者は通院が困難なすべての人だったからである。 

 

 そして想いの強さは国や政治家を動かし、2006年厚生労働省がん対策の推進に関する意見交換会にて「診断時からの緩和ケア」を唱え、末期がん患者が入る緩和ケア病棟のみだった「緩和ケア」が少しずつ動き始めた。

 

 また2008年、幕張メッセで第16回日本ホスピス・在宅ケア研究会千葉大会を大会長として開催し、堂本暁子知事(当時)を名誉大会長としてお迎えした。大会テーマは「地域コミュニティの場でのホスピスケアを」で、「新たな局面を迎えた緩和ケア-住み慣れた家での最期は可能か」「もうひとつの我が家~施設でのターミナルを考える」「認知症の方の緩和ケア」「小児在宅緩和医療」「子ども共育-いのちの授業」「自死遺族」等多彩なプログラムを用意し、あらゆる人にホスピスケアが届いてほしいという願いを込めた。

 

プラハ憲章2013-緩和ケアを受けられることは人々の権利

 2015年、エンドオブライフ・ケア協会設立の時に発起人の一人として参加をしたが、今度は実家の家族二人が認知症となった為、中距離介護が始まり、しばらく協会とは離れていた。2018年、日本ではがんの領域だけで語られていた「緩和ケア」が、やっと心不全に広がった。

 

 世界では、2005年第9回ヨーロッパ緩和ケア学会(EAPC)にて、緩和ケアをがん以外の領域に拡大する提案が出て、2007年第10回大会ではがん以外で死にゆく高齢者やその他の人達の苦しみに目を向けるよう、国の政策として推進することが採択された。

 

 2013年第13回大会では「プラハ憲章」を採択した。緩和ケアを受けられることは人々の権利であると、公衆衛生的手法で緩和ケアを推進することを、ヨーロッパ緩和ケア学会、国際ホスピス緩和ケア協会、世界緩和ケア連合、および、ヒューマン・ライツ・ウォッチが共同して提唱した。

 

 アジアでも同様に、2011年第9回アジア・太平洋ホスピス会議(APHC)にて、「哀れみ」から「人権」へ/「死」を包括した医療へ/「死」を前提とした社会生活へ/自己決定を尊重できる社会へ/「公衆衛生」としての緩和ケアへ/医療の共通基盤としての緩和ケアへ/について、議論がされていた。しかし日本では、いまだに緩和ケアの戦略がみえてきません。


(以上、加藤恒夫「人権としての緩和ケア」.第18回日本在宅医学会大会特別講演.2016.7)

 

ELC千葉船橋始動-ユニバーサル・ホスピスマインドを広める

 苦しみは、病や障害をもつ人だけが感じるものだろうか?


 ユニセフの先進国の子ども幸福度ランキング2020「レポートカード16」では、日本は38か国中20位、「精神的幸福度」はワースト2位になっている。そして世界幸福度ランキング2022では、日本は146か国中54位、「人生の自由度」「他者への寛容/寛大さ」の低さが指摘されている。子どもの時に自己肯定感・自尊感情が十分育たず、それが大人になっても継続されていく。もっと幸せを実感できる社会であってほしい。辛さ苦しさを分かち合える社会であってほしい。 

 

 題につけた「最期は真心の輪の中で迎える」は船橋市地域福祉計画の「地域福祉の5原則」の一つであり、2005年第1次船橋市地域福祉計画策定の時に、私は副委員長として関わった。「人は誰もが老い、心細い時期を迎えますが、この時期に何を頼りに生きればいいでしょうか?若い時期から地域の人を思って誰かの役にたち、楽しく活動してきた方の周りには、真心で結ばれた人の輪ができているはずです」と、誰もが真心の輪の中で最期を迎えられる地域づくりをしようという想いが込められている。

 

 2022年5月14日、ELC千葉船橋の第1回学習会「ELC千葉船橋始動!千葉の輪を創ろう!」をオンラインで開催した。今後、学習会開催により「苦しむ人への援助と5つの課題」を理解した真心の輪を千葉県中に広げ、「折れない心を育てるいのちの授業」を子どもや地域に向けて伝え、幸せを実感してもらえるよう働きかけていきたい。そして、ELC協会が新しく掲げた「ユニバーサル・ホスピスマインド」をELC千葉船橋からも発信していきたい。

 

<参考文献>

藤田敦子.厚生労働省がん対策の推進に関する意見交換会.2006.12
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/12/dl/s1213-7a13.pdf

第16回日本ホスピス・在宅ケア研究会千葉大会.2008.7
http://www.npo-pure.npo-jp.net/chibataikai.html

加藤恒夫「人権としての緩和ケア」.第18回日本在宅医学会大会特別講演.2016.7
http://www.kato-namiki.or.jp/html2/medicalinfo-folder/DrKato_folder/160717_Zaitakuigakkai-Kato.pdf

子ども幸福度ランキング「レポートカード16」.2020.9
https://www.unicef.or.jp/report/20200902.html

世界幸福度ランキング.2022
https://worldhappiness.report/ed/2022/

第1次船橋市地域福祉計画.2005
https://www.city.funabashi.lg.jp/kenkou/fukushi/005/p099452.html

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