コラム92:母の介護を通して学んだこと、気づいたこと

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2022.07.21

琉球大学医学部 医学教育企画室
医師 名嘉地めぐみさま

(第108回生)

 私は内科医ですが、現在、母校の医学教育に関係する部署に勤めています。どういう仕事をしているのか、よく質問されます。医学科のカリキュラムの構築や医学科4-6年生が参加する臨床実習に関する教育に携わり、各診療科や学外病院・実習生とのコーディネートを行っています。

 昨年4月、同級生から沖縄県立中部病院呼吸器内科の長野宏昭先生をご紹介いただき、その後、ELC沖縄主催定期学習会に参加させてもらい、エンドオブライフ・ケア協会の存在を初めて知りました。今年1月に医学科5年生対象に「援助的コミュニケーション 解決困難な苦しみにどう向き合うか?」というタイトルで長野先生に授業をご担当いただきました。私自身、長野先生のご講演の内容に共感したというか、私が悩んでいることが解決するかもしれないと希望の光が射す感じでした。

 昨年9月にパーキンソン病を患っていた母が他界しました。約8年前、薬を内服しても母の体の震えが治まらず、汗だくになっている母の体をマッサージしたり、体を拭いたりしましたが、足が攣って痛がっているときに、どういうふうに対処したら、母は楽になるのかとずっと悩んでいました。ある時、母が、「足がつって痛い。私の痛みなんてわからないでしょう!」と魂の叫びのような声で私に訴えてきた時に、私はなんと答えたら良いのかわからず、最後は喧嘩してしまい、「私だって力になれなくて困っているんだよ。困っているのは母ちゃんだけじゃないのよ!」と強い口調で言ったことを覚えています。その後、母が「ごめんね…。」と言っていたことを覚えていますが、一番きついのは母なのに、なぜ優しい言葉を私はかけられなかったのだろうと自分を責めて、後悔していました。

 母が他界した後も、母にどのような声掛けをしたほうが良かったのだろうと自問自答を繰り返していました。長野先生の授業を通して、「反復、沈黙、問いかけ」という方法をとりながら、母の話を傾聴し言語化することができたら、母はもう少し楽になったかもしれないと自分なりの答えにたどり着きました。その後、もっと勉強したいと思い、「エンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座」、「折れない心を育てるいのちの授業 講師とレーニング」をさっそく受講しました。母の死をまだ受け入れられない時期だったので、eラーニング講座で小澤先生のお話を通して、自分自身のグリーフケアとともに気持ちを整理する機会をもらった感じでした。もちろん、動画を視聴しながら涙をいっぱい流しました。

 母が常々、「私がこの病気になったのは意味がある。私の病気を通してあなたが医師として学ぶきっかけになるかもしれない…。この病気を通して家族が仲良くなるのであれば、それは嬉しい。」と言っていました。パーキンソン病は難病に指定されており、根治する治療法がない中で、病気になった母は存在意義を探していたのだと思います。穏やかになれる条件として3つの支えがあることを学びましたが、苦しみから支えに気づき、「自らの支え」が家族の支えであることを見出していたのでしょう。通常なら死にたいと言いたくなるような状況でも、母は弱音を吐かず、折れない心で病気と闘うというか向き合っている姿には脱帽でした。

 先ほど、医学教育に関わっていると紹介しましたが、エンドオブライフ・ケア協会の講座を受けて、国内の医学教育カリキュラムでは、解決できない困難に向き合ったり対処したりする方法を学ぶ機会が不足していることに気が付きました。小澤先生から、全国の医学部のカリキュラムの中に、本協会の取り組みを導入している大学があることを伺いましたが、微力ながら今後協力できればと思っています。

 沖縄には、「ちむぐくる」という「思いやりや助け合いの精神」という意味の方言があります。先ほど、穏やかになれる条件として3つの支えを学んだことをお伝えしましたが、その一つである「私の将来の夢」ですが、一人でも多くの「ちむぐくる」をもった医師の育成に関わることができたらと思っていて、今後も医学生のサポートを行っていきたいと思っています。

 コロナ禍でストレスがかかる環境下ですが、辛くても頑張れるもう一つの楽しみ(将来の夢)は、琉球ゴールデンキングという存在です。今期は残念ながらBリーグ準優勝でした。来シーズンBリーグ優勝を成し遂げるためにさらに琉球ゴールデンキングスを後押しします(Go!Go!Kings!)。ちなみに牧隼利選手のファンです。

 

~最後に天国の母へ一言~
「ねえ、母ちゃん、天国では痛みもなく、元気に走っているかな。足が痛いときに母ちゃんに優しい言葉をかけられない時があり、本当にごめんね。この世の人生、修行だらけだけど、逃げずに向き合っていくね。天国から見守っていてね。」娘より。
 

エンドオブライフ・ケア協会では、このような学び・気づきの機会となる研修やイベントを開催しております。活動を応援してくださる方は、よろしければこちらから会員登録をお願いいたします。

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