コラム96:ディグニティセラピーを学んでいこうと思った理由 ~すべての人が、自分が自分で良かったと思えるように~

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2022.11.30

会社員
久保田哲史さま
(第118回生)

 私がいま学び始めて思うことは、ディグニティセラピーの効果は年齢や健康状態に関係なくすべての人に置き換えることができるセラピーであるということです。

 本来は人生の最終段階における人へのセラピーが中心だと思いますが、自分自身や身近な誰かを癒し、耀かせることの出来る素晴らしいものだと思います。

 「人として生まれ、幸せな人生・最期って結局何だろう」、私がここ数年よく考えていたことです。まず私のことをお話しします。私は何年も、家族を含む人間関係や仕事、自分の特性、本当の想いとかけ離れた現実に悩み、さらに周囲との比較に自己嫌悪に陥ることも多かったです。 

 自分の存在価値や今後も生きていく意味も分からず、生き辛く、ときに希死念慮が浮かぶこともありました。エピソードはかなり長くなるので掲載の省略をご容赦ください。


 「独りで居たい、でも寂しい」そういう状態を繰り返していました。当時、私の中には「独りで居たい」の根源に、いまの自分の苦しみを誰も理解してもらえないと自分勝手に思い込んでおり、「寂しい」の根源には、本当は自分の話をゆっくりとただただ聴いてほしいと思っていました。

 「いまの自分の心を楽にする方法はないか」と探していた折、ディグニティセラピーの存在を知りました。自分の人生を振返り、自分のこれまでの想いをまとめなおし、伝えることで今後自分らしく生きることができると直感で感じました。

 いま小さなことから実践を始め、自分と周りが変わり始めたことを肌で感じています。そしてそれは父親の介護にも活かし始めています。

* * *

 私には、20年来全盲の父親(80)が居り、実家で独り暮らしをしています。全盲に加え、聴力と歩行も衰えを隠せない状態です。普段の生活は介護ヘルパーさんなど地域から支えられていますが、昨年救急搬送が3回もあり家族の許しも得て、平日の夜に私が実家に泊まることも多くなりました。

 介護のつもりで帰ったのですが、現実は真夜中の父親の頻繁な要求と我儘な発言に私の父親に対する受け答えも日ごとにきつくなっていっていました。時にお互い声を荒げることも多く、介護を放棄してしまいたいと思ったことも何度もありました。

 父親からも「目が見えなくて絶望している俺の気持なんか全然分かっていない」と何度も言われました。

 いま、ディグニティセラピーを学び始め、父親との関係も変化が起きています。目が見えない現実は自分には解決できない、ただ絶望していることは少しでも緩和できると知りました。父親がいまどんな想いで、何を支えに生きているのか、自分のことを伝えたい人は誰か、これからやってみたいことは何かを小分けに聴き始めました。すると、自慢話・武勇伝も沢山言いますが、他人への感謝の言葉、夢や希望も本当に誇らしく嬉しそうに語り始めました。

 それからは、普段夜遅くまで起きて煙草を吸っていた父親の就寝時間が少しずつ早くなり始めました。少しずつ穏やかになり始めていることが分かります。
 
 父親は「いずれ介護施設にお世話になることになる」と言い始めましたが、その前に色々と話を聴いてみようと思います。

* * *

 冒頭で書きました「人として生まれ、幸せな人生・最期って結局何だろう」、人によってまったく定義は違いますが、いまの私は「自分が存在したから、他の誰でもなく自分だったから成せたことを知ること、自分が自分で良かったと思えること」だと思います。

 そしてそのことを大切な人に伝えられることだと思います。

 逆を言えば、哀しいことは、「これまでの自分自身を認めることができない、自分を好きになる機会を奪われること」だと思います。或いは「伝えたいことがあることに気付いた時には伝える手段、力が失われてしまっていること」だと思います。

 一人一人生まれたときから環境は違います。環境によって最初から出来ること、出来ないことはあります。ただ、どんな環境であっても自分でなければ出来なかったことは沢山あると思います。出会えた人、思想、生き方、繋げた命、習得したものなど価値あるものばかりです。誰にでもあるはずです。決して社会的地位や財産が成功や幸せであるとは限りません。いかに自分らしさとして生きていけたかと思います。
 
 これから沢山の人と私も出会っていくと思います。ディグニティセラピーの効果を理解し、自分の人生と関わっていく人たちの尊厳に役立てていきたいと思います。

 そして、いつか一人一人のヒーロー伝説の冊子を一緒に作っていきたいと考えています。

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