コラム98:ピアサポーターとして 心はいつも近くにありたい

  • 解決できない苦しみ
  • 聴く
  • わかってくれる人がいるとうれしい
  • 言えない想い

ピアサポートよこはま ボランティア

森結夏さま

(第120回生)

 結ぶに夏と書いてゆか。名前の通り夏生まれのかに座です。2006年秋に乳がん告知を受け、かに座キャンサーが文字どおりキャンサーがんになったわけです。

 そんな折、小澤先生のご講演を拝聴、『苦しみの中でも幸せは見つかる』との出会いがありました。が、当時の私には、苦しみの中に幸せを見つけることは容易ではありませんでした。

 がん友さんの旅立ちをきっかけに、2011年6月~カドベヤ(現在はピアサポートよこはまと名称を変更)でのピアサポート活動に参加、2012年9月~県内のがん診療連携拠点病院でもピアサポートを担当させて頂いています。病院内は対面ですが、ピアサポートよこはまでは2020年6月からオンラインで活動。オンラインには問題点もありますが、遠く離れた場所の方と互いに顔を見てお話しができるのは一番の利点ではないかと思います。

 私たちピアは医療者ではありませんので、医療介入しない、というのが大原則。「誰に話したらいいんだろう、このもやもや・・・」といった解決できない問題をお聴きし、一緒に考えています。

 たくさんの方のお話を伺ううちに、聴く、聴ききることの難しさを強く感じ、がんやコミュニケーションに関するたくさんの本を読み漁りましたが、頭で理解することと実際にできることの間に大きなギャップを感じていました。そんなときに近所の書店で『あなたの強さは、あなたの弱さから生まれる』に出会い、エンドオブライフ・ケア援助者養成基礎を受講しました。『死を前にした人にあなたは何ができますか』の中の「どれほど本を読んでも、泳ぐことはできない」という一行は、私が悩んでいたことを一言で言い当てているように感じました。

 講座の中では、様々な気づきと学びがありました。

 ピアサポートの現場で、「沈黙」は度々ありますが、「反復」は難しいと感じていました。「オウム返し」を相手はどう感じるのか、という怖さもありました。「一生懸命聞いていますよ」と伝えたい気持ちが先走り、余計な言葉を発してしまうことがよくあることにも気づきました。でも、今回のロールプレイの中で、自分が聴いて頂く役になったとき、私が発した言葉をそのままに、別の言葉をはさんだり言い換えたりすることなく反復してもらうことで、自分の言葉を静かに反芻することができ、整理しやすくなりました。私が懸念していた嫌な感じは、しませんでした。小澤先生の「オウムはうなずかない(ので反復とは違う。また、反復は相手が主語)」という言葉に、「なるほど」と腑に落ち納得できました。

 反復、沈黙で相手の心が和らいだところで、「ところで」と問いかけに進むと、言葉が迸るように出てきます。自分が聴いて頂く役のとき、自然に素直な気持ちになれ、「わかってくれる人がいると嬉しい」を体感できました。

 ソーシャルディスタンスが叫ばれる昨今ですが、心はいつも近くに、わかってくれる人になりたいと思います。


 

エンドオブライフ・ケア協会では、このような学び・気づきの機会となる研修やイベントを開催しております。活動を応援してくださる方は、よろしければこちらから会員登録をお願いします。

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