コラム101:ハングルで伝えたい

  • 原点
  • わかってくれる人がいるとうれしい
  • いのちの授業

医療法人同友会共和病院 医療福祉課 医療相談員(MSW) 

洪東基さま

(折れない心を育てるいのちの授業レベル1認定講師)

在日朝鮮人として生まれて

 私の祖父母は韓国で出生、両親は日本で出生したので、私は在日三世の朝鮮人である。学生時代から教師の道を目指していたが、家庭環境(長男、貧困)の事情もあり、高校を卒業して現在の職場である共和病院に就職した。

 

 当初、臨床検査技師を志望したが、枠がなく事務局に配属された。患者さんと接することなく10年間を過ごしたが、その後医療相談員(MSW)として異動になった。思えばこれが人生の分岐点であったのかも知れない。

 

 教師は断念したが、介護福祉の専門学校、ケアマネ受験対策、介護福祉士養成、訪問看護員養成の講師経験を活かすことができると思い、「折れない心を育てるいのちの授業」認定講師の仲間に入れていただいた。  

 

はじめての授業

 「折れない心を育てるいのちの授業」の認定講師となってから、過日、大阪市内の小学校(6年生対象)でデビューした。前日は不安で気持ちが昂り深夜2時に起床、それでも何度もスプリクトを読み返しスライドも見直して、イメージを持つようにした。教室に入るとはじめは緊張したが、彼らの屈託のない笑顔や真剣なまなざしをみて、勇気と自信が沸いてきた。

 

 開始前には話を理解してくれるだろうか?退屈にさせないだろうか?コミュニケーションは図れるのかと心配ばかりだったが、いざ始まった授業はあっという間の90分で、その間子供たちのうなずいている顔や、真剣な様子をみて、「いのちの授業」の大切さを理解してくれていることを感じ、授業が終わる頃には涙が出るほど感動した。 

 

 苦しんでいる子供たちが本当にわかってほしいのは、誰にも言えない自分の苦しみをわかってくれる人なのだと思う。しかし、本当の意味で相手の苦しみを“わかる”ことは難しい。だから、「苦しいんだね」と、相手から見て、私が“わかってくれる人”になりたい。

 

  では、どうしたら、相手に”わかってくれる人”と思ってもらえるのか。子供たちには、それを考える大人になってもらえたらと思う。

 

 さらに、子供たちの感想文を読んで、自分が「役に立てた」ことを実感することができた。また、これまで講師になることを勧めていただいた講師仲間と出会えたこと、話を聞いたり、サポートとして関わる中で、「講師仲間」が、僕自身の「人生の宝物」だと感じた。

 

将来は韓国でも

 現在ウリハッキョ(朝鮮学校)は、北は北海道から南は九州福岡まで、幼稚園から大学まで日本全国で65校が運営されている。いのちの授業の講師を目指したのは自身の強み(ハングル会話)を活かして、ウリハッキョ(朝鮮学校)でウリマル(ハングル)で伝えることができればどんなに素晴らしいことだろうと感じたからだ。また他の講師たちからもそのことについて共感を得た。たとえ自分が教壇に立たなくても、ハッキョソンセンニン(学校の先生)たちが「折れない心を育てるいのちの授業」の認定講師となって、伝えていただける日が早く来ることを願っている。

 

 ウリハッキョもご多分に漏れず、少子化の煽りを受け学校閉鎖や合併の勢いが止まらない状況である。時間的な猶予がないので、1日でも早く教壇に立っていただけたらと思う。

 最後に。近い将来、韓国(OCED30か国の中で最も自殺の割合が高い)で「折れない心を育てる いのちの授業」の開催を果たすことがもう一つの「夢」だ。そのため、自己研鑽を怠らず精進していきたい。この夢を現実にするまでには苦しい経験をするかも知れないが、実現に向けて邁進したいと思う。

エンドオブライフ・ケア協会では、このような学び・気づきの機会となる研修やイベントを開催しております。活動を応援してくださる方は、よろしければこちらから会員登録をお願いします。

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