コラム105:わが息子との別れが、導いてくれた学び

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岡山県倉敷市公立小学校教頭

橋本博和さま

(ELC第131回生)

 息子に悪性脳腫瘍(膠芽腫)が見つかったのが、高校3年生の10月。開頭手術を終え、放射線治療が終わったのがクリスマス・イブでした。

 

 その後、地元の大学に進学し、抗がん剤や治療のための手術を繰り返しながら、すてきな友達や部活動の先輩などと充実した大学生生活を送っていました。

 

 この4月、大学2年生になってから少しずつ状態が悪化。担当の医師からはもう積極的な治療はないと言われました。息子と家族で選んだ療養場所は自宅。大好きな兄は大学院に進学したばかりでしたが、講義を休み、東京から帰ってきました。妻と兄とともに、どうしたら息子が穏やかに過ごせるか、そればかりを考えていました。

 

 できないことが日に日に増えていく息子の様子に不安は募るものの、常に明るく前向きに、大好きなお笑い番組を見て、そして、ばか話に花が咲かせる日々を送りました。息子の口からは、病気について、人生について、マイナスな言葉や不安な言葉は全く出てきません。家族のいる時間が毎日楽しいといっていました。お見舞いに来た友達にも明るくふるまっていました。

 

 そして、それは息を引き取る前日、意識は朦朧としながらも息子は、友達にバイバイと手を振っていました。だれよりも人を愛する姿を最後まで見せました。

 

 2023年5月14日の朝、息子は、私と妻、兄に囲まれて、穏やかに19年の人生を終えました。

 

 息子の人生から、何を学べるのか。その時、小澤竹俊先生の『いのちの授業』を手にしました。小学校教師である自分が、「命の大切さを伝えたい。」その思いで購入した書籍です。

 

 その時、初めてエンドオブライフ・ケアに出会いました。小澤先生のお話が聴きたい。エンドオブライフ・ケアの研修を受けてみたい。そう考え、講座を申し込み、6月4日の講座を迎えました。正直な話、マイナスな言葉を一度も言わなかった息子の心の声を聴きたい、看取り方はこれでよかったのかなという答え合わせがしたい、そんな思いも講座に求めていたような気がします。
    
 さて、今回の講座で学んだ「反復」「沈黙」「問いかけ」は、人生の最終段階の人の思いを大切にする援助はテクニックです。しかし、同時にそれを超越した非常に尊い関わりでした。息子との別れの辛さは、まだ癒されませんが、それがなければ、この学び、この経験はありませんでした。

 

 これからも、だれかの支えとして生きていくことができるように、しっかりと学んでいきたいと思っています。ありがとうございました。

エンドオブライフ・ケア協会では、このような学び・気づきの機会となる研修やイベントを開催しております。活動を応援してくださる方は、よろしければこちらから会員登録をお願いします。

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