琉球大学医学部医学科5年次
伊良波 梨奈
(折れない心を育てる いのちの授業レベル1認定講師)
現在24歳。私は、人生は常に頑張らなければならないと思い込んでいました。
小学2年生のとき、私は視力が悪く、眼鏡をかけるようになりました。当時眼鏡をかけている子は珍しく、一部の子は私に「メガネザル」とあだ名をつけてからかったりいじめたりしました。私はその時から、自分は存在していい人間なのか、考えるようになりました。また、勉強ができた私は、母から「能ある鷹は爪を隠す」という言葉を教えられ、自分を隠すようになりました。自分のことが好きになれない、ひた隠しにする、一言で自己肯定感の低い子どもでした。中学に上がり、ボランティア委員会に入り、地域清掃や募金活動など様々な活動を行いました。ボランティアをしているときだけは、自分がここにいて良いと思える瞬間でした。次第にやりがいを感じるようになり、将来は人の命を救いたいと、医師を志すようになりました。
大学4年の春、長野宏昭先生のいのちの授業をオンラインで受ける機会がありました。受講しながら、「私が今まで求めていたものはこれだ」と感動すると共に、涙がこみ上げてきたのを今でも鮮明に覚えています。中でも、「苦しみはわかってくれる人がいると嬉しい」という言葉を聴いたとき、今までの苦しみが報われてフッと軽くなる感覚がありました。今まで、良い点を取ったことも、いじめられていることも隠してきた私は、自ら「わかってくれる人」を遠ざけていたのかもしれないと思いました。そして自分の苦しみを認め、他の人に見せても良いのだと気付きました。授業を通して、「君はそのままで良いんだよ」そう言われた気がしました。それからというもの、自分のことをわかってくれたと気づけるようになり、家族や友人に素直になることができました。また、自らも誰かにとってわかってくれる人になれるということがわかったのです。
私のように自己肯定感の低い子はまだまだたくさんいる。その子たちに早くこの授業を届けたい。私は初めて受講したその日に、認定講師になることを決意しました。
認定講師になって初めてのいのちの授業は、地元の小中高生向けにやりたい。そう決めていた私は、地元の公民館を借りて、地元の子どもたちとその保護者を対象に行いました。こども達に、苦しみを希望と現実に分けることで、モヤモヤしていたものがすっきりする感覚や、わかってくれる人の存在に気づいてほしい。保護者には、こども達にとってわかってくれる人になるにはどうしたらいいか考えてほしい。受講者の感想文からも、そんな私の思いが十分伝わったと感じる授業でした。
長野先生を通して小澤先生や千田さんと出会い、エンドオブライフ・ケア協会8周年シンポジウムに登壇させていただきました。今までの私なら、「公の場で私が登壇して自分のことを話すなんてあり得ない」と、断っていたと思います。しかし、お話を頂いたとき、「ELC協会の皆さんなら、受け入れてくれるかもしれない」と感じたのです。ユニバーサル・ホスピスマインドに出会って、私は少しずつ自己肯定感を育んでいるのかもしれない、そう感じました。登壇して、ユニバーサル・ホスピスマインドがどれだけ大きな力を秘めているか、実体験を通して自らが気付いたことを伝えることができました。シンポジウムを通して素敵な人々と出会い、お話を聴いて自然と涙が流れ、穏やかな時間が流れていることに気が付きました。
いのちの授業や援助者養成基礎講座、シンポジウムを通して、気が付いたことがあります。それは、ユニバーサル・ホスピスマインドは、全ての世代で、あらゆる場面で生きてくるということです。患者さんとの接し方、家族や友人との関り、そして自分と向き合うとき。ふと気が付けばそこにユニバーサル・ホスピスマインドがある。そして自分が、誰かが、穏やかになる。そんな素敵なユニバーサル・ホスピスマインドをこれからも学び続けたい、そして学びの輪を広げていきたいです。
エンドオブライフ・ケア協会では、このような学び・気づきの機会となる研修やイベントを開催しております。活動を応援してくださる方は、よろしければこちらから会員登録をお願いします。
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