コラム113:学び続けることで芽生える小さな一歩

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特別養護老人ホームかんべの里

金山 紀美代さま

(島根第1回生、認定エンドオブライフ・ケア援助士、認定ファシリテーター)

エンドオブライフ・ケア協会との出会い

 私は、島根県出雲市内の特別養護老人ホームで施設ケアマネとして勤務しています。施設で看取りまで関わらせて頂く機会が増え「ご家族へなんと声をかけるといいのか?」…と構えるばかりで言葉が出ず、ご利用者家族を前にして何もできない…力になれないな…と足が遠のくような思いを感じていました。


 そんな頃、出雲市でのエンドオブライフ・ケア援助者養成講座との出会いがありました。私は、ご家族との面談や会話の中で沈黙は怖い…何か言わなければいけない…と感じていましたが、受講を終えた時【沈黙は、苦痛な時間ではなく相手の気持ちを整理し表出する大切な時間であること】ロールプレイを通して実感し、養成講座での大きな学びでした。


 この学びは、私だけではなく一緒に働くスタッフと共有したい!相手から見てわかってくれる私たち、ご利用者やご家族と最期まで誠実に関わり続けられるために皆に届けたい!とELCファシリテーター資格を取得しました。

 

 

施設内学習会の開催

 今年で3年目となる施設内での学習会を通して、受講中のスタッフの様子や感想等から様々な学びがあります。

 

 年に1回の学習会は、1時間15分程度の限られた時間です。毎回どのように資料作りをするとよいのか?わかりやすく伝えることができるのか?と悩みます。初回の開催前にはELCしまねの皆さんより「学習会の中で大切なメッセージを伝えるために事前資料の作成による工夫をしてみるとよいのではないか」等とアドバイスを頂きました。


 以降3年間の学習会には、事前資料を作成し一読して参加してもらうことで有意義な学習会となるよう取り組んでいます。

 

 参加スタッフは10名以内ですが、第1回、2回は援助的コミュニケーションの『反復』と『沈黙』のロールプレイを体験するプログラム。少人数ですが、それぞれのグループの様子に目を配りながらも、十分な配慮やサポートができなかったと反省したこともありました。


 まさに兄弟の生命が危ういと言われている時期に参加したスタッフは、ロールプレイ中に感情をこらえきれず涙を流す場面がありました。進行もしながらそのスタッフの気持ちをその場でフォローすることができなかったことは申し訳ない気持ちになったこともありました。

 

 3回目の学習会は、事例検討にて『苦しみ』と『支え』を見つけるというプロセスを可視化する作業とともに進めました。学習会では、ファシリテーター用に用意された事例をもとに事例検討を進めました。学習会を進め、事例内容の紹介とそこから考えられる苦しみや支えを考える場面で、一人のスタッフは事例家族構成とほぼ同世代であることから感情移入してしまい、そこから抜け出すのに時間を要し言葉にできないスタッフがいました。


 学習会を終えて思うことはロールプレイにより辛くなる人がいること、そして事例検討のための事例選択や内容について参加者に配慮したものがよかったのか?ということです。また、このような場面に遭遇した時どのような私であればよいのか?を考えました。


 施設内学習会だけではなく、その他地域学習会等へ参加して気づいたことと重なり、どのような場面でも相手の想いを聴き『反復』を重ねながら相手の思いを理解しようとすることが大切なのだろうと改めて思いました。

 

 短時間内での事例検討では「支え」を強める点をもう少し深く考えたいと考えていたのですが、思うように深めることができなかったと課題も残った今年の学習会でした。


 課題や不安はありますが、学習会ごとに参加スタッフから感想をもらうことで、大切なことを感じてくれたんだなぁと嬉しく感じてもいます。これは私自身の学習会を続けていく『支え』なのだと思います。

 

 

学びから実践へ①

 

 ある日の夕食後、男性スタッフを息子と思い…ご利用者から「誰にも言うことではないけれど、死にたい…」と聞かされたスタッフは、「死にたい…」と訴えられたご利用者から逃げず、「なんでそんなこと言うの?」ではなく「死にたい…と思うのですね…。…私は、あなたがいてくれることが嬉しいのです…」と話を聴き伝えたことを教えてくれました。

 

 

学びから実践へ②

 

 「もう先が短いと思うから…」と食べることが大好きな高齢のご利用者がつぶやいた時、話を聴いたスタッフは「…もう先が短いと思うんですね…食欲がわかないような時にはどんなものを食べたいですか?」と聴いたのですが、こういう時にどのように声をかけると良いのかな?と伝えてくれたことがあります。最期までそのご利用者が穏やかに過ごせる「支え」の一つとして、お気持ちを聴きたいと関わろうとしていたことを教えてくれました。

 

さいごに

 

 私は、対人援助職として『わかってくれる私たちでありたい!!一緒に働くスタッフ同士も相手の苦しみを理解しようと気にかけ、声をかけあえることやご利用者支援に繋げたい!!』と思います。学習会ごとに参加スタッフが日々の関わりのなかで実践したことを教えてくれることは、私にとってとても嬉しい瞬間です。本当に小さな一歩ですが、援助的コミュニケーションの基本である~苦しんでいる人は自分の苦しみを分かってくれる人がいると嬉しい~が本当に少しずつではありますがスタッフの間にも浸透してきているのだと感じています。

 

 そして、一緒に働く仲間が日々のケアの中で感じている不安や辛い気持ちを伝え合える関係であるためにもELCでの学びを生かしていきたいと感じています。そして、解決できない苦しみを抱えた方が施設生活においても穏やかな気持ちで過ごし続けられる支援を考え続けられる私たちでありたいと思います。

エンドオブライフ・ケア協会では、このような学び・気づきの機会となる研修やイベントを開催しております。活動を応援してくださる方は、よろしければこちらから会員登録をお願いします。

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