コラム116:お互いのこころのために

  • わかってくれる人がいるとうれしい
  • 解決できない苦しみ
  • 関わるすべての職種にできる援助

訪問介護ヘルパー/ソウルサウンドライアー奏者

道場明子さま

(ELC第77回生)

 

「応え、答え」の壁


「家に帰りたい、胃ろうにしたら帰れると先生に言われた。どうしたらいい?」


 2015年、神経性の難病を患い、自宅で療養していた父が救急搬送され、まだ言葉を話せていた時の会話です。


 何か言わなきゃ、答えなきゃ、励まさないと、どう答えたらいいの?当時の私の頭は面会に行くたびに混乱しました。

 

 結局父は家に帰ることがかなわず、転院先で亡くなりました。今でもその時の無力感、後悔の思いは強く残っています。

 

 「こんな体になっちゃって…」

 

 2018年、未経験、無資格から訪問介護のヘルパーの仕事を始めました。初めての仕事は自費契約の方の話し相手だったのですが、この言葉の繰り返しにどう対応していいか悩みました。

 

 

 

「傾聴」との出会い


 介護職員初任者研修では私が求めるものに出会えませんでしたが、通信教育で「傾聴」を学びました。


 地元で傾聴ボランティア講座があることも知り、そこで会った方に誘われたのが瀬谷の小澤先生のクリニックでの集まりでした。

 

 2019年夏頃です。
 

 初めてお会いした小澤先生はとても気さくな方でした。緊張している私の隣に座られて、いろいろと話しかけてくださいました。


 自転車で行かれる距離なので暖かくなったらまた行こうと思っていたら、コロナ渦に突入。
 

 2020年7月のオンラインでのエンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座を受講し、全国の同じ志を持つ方々と出会いました。

 

 1年ほど離れましたが、昨年戻ってみたらやっぱりみなさん、温かい方々ばかり。ここに来るとほっとする、そんな居場所だと改めて思いました。

 

 

 

お互いのために


 「反復、沈黙、問いかけ」。私はこの技法に出会って、身構える内容の会話に応対した後の自分の気持ちが楽になることに気づきました。


 「私」が相手を理解するために知りたいことをきく、のではなく、「相手」が自分のことを「わかってくれた」と感じられることに意識を向けてきくことで、かつてのような「応えなきゃ、何か言わなきゃ」がなくなったからです。

 

 同時に「ああ言ってよかったのかな、他の言い方もあったのでは」と後悔することもなくなりました。自分の経験から、お互いの心のケアとしてもっと多くの人に知ってもらいたいです。

 

 あの時 目の前に立ちはだかった2つの壁。それがあったから、今、私はここにいます。

 

エンドオブライフ・ケア協会では、このような学び・気づきの機会となる研修やイベントを開催しております。活動を応援してくださる方は、よろしければこちらから会員登録をお願いします。

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