コラム123:「ねぇ?私これからどうなるんやろ・・・」長年の悩みに私なりの答えが見つかった・・・

  • 解決できない苦しみ
  • 言えない想い
  • 原点

松山市地域包括支援センター三津浜 看護師

川島あゆみさま

(愛媛第2回生)

 高校卒業して、病院に勤めながら、昼から看護学校への生活を5年間行い、ようやく看護師免許をもらえた私はこれからの看護人生を謳歌する予定でした・・・。急性期、終末期病棟を経験し、看護ケアには自信が出てきた頃、結婚し、のちの自分の「私の支えとなる」子供も生まれ、予定通りのレールをルンルンと進んでいった矢先、一つ目の置石につまずきました。離婚し、夜勤が出来なくなった私は、「夜勤がないなら・・」と訪問看護ステーションに異動しました。在宅は初めてだったので、あまり知識のないままのスタートでしたが、女子サッカーで養った、気合と根性で乗り切れると勝手に思っていました。「その日」までは・・・

 

 50代 女性 神経難病 県外で生活されていましたが、だんだんと体の動きが悪くなり、親族と暮らすようになって訪問看護等の在宅サービスの導入が始まりました。お話が大好な方で、スポーツ観戦の話、推しチームのこと、家族のこと、都会での楽しかったエピソード・・・寝たきりになられていたので、足湯や、処置をしながらの二人女子会が盛り上がり、私としては、勝手に「信頼されている!」と感じながら、仲良く楽しく訪問時間を過ごさせていただいていました。

 

 そして「その日」が・・・

 

 いつものようにキャーキャー女子会を終了し、訪問記録をベッドの下で書いていた私に、「ねえ?川島さん・・・私これからどうなるんやろう・・・」いつもの声のトーンと変わり、涙をこらえて必死に絞り出しているように聞こえ、私は慌てて本人の視界に入るように立ち上がりました。いままで見たことのない、とてもとても悲しそうな表情でじっと私を見つめていました。「どういう返事をするべきか・・・」頭の中がパニック状態になり、自分の中で正解回答をぐるぐる考え、目も泳ぎ、眉間にしわを寄せてしまっていたのだと思います。そんな私の表情を見て、「困らせたね・・ごめんね・・やっぱりあなたも私の気持ちはわかってない・・・」と言われた後、「もういいよ、お疲れ様。ありがとう、ごめんね」
 本人にとって、絶望の言葉をすべて言わせてしまったと感じました。何も言えない私は、涙をこらえて、「すみませんでした・・・」と頭を下げて片付けをして帰る事しかできませんでした。帰りの車の中で、漫画のように、頭の上に大きな岩を置かれ、ずーーーんと沈んでしまう感覚であったのを覚えています。

 どのルートで帰ったかどうかも覚えていませんが、ステーションに帰り、所長に報告すると、「え!?何も言えずに帰ってきたの?本人の気持ちどんなものか・・考えたの?もう川島さん担当チェンジよ!!」と担当変更を言われてしまい、その日以降お会いすることなく、職場が変わりました。もやもやを残したまま・・・

 

 その後、ご縁あって松山市地域包括支援センター三津浜に勤務させて頂き、様々な困難ケースに立ち向かっている間に、昔の記憶は薄れつつ、あっという間に10年が経ちました。色々あった在宅看護経験を活かしながら、自分の中で勝手に封印していた、訪問看護のエピソードを忘れかけていた時、エンドオブライフ・ケア愛媛代表:宇田真記先生に研修のお声かけを頂きました。

 

 二日間の研修でしたが、小澤先生、千田先生、宇田先生の三人の「ズキューン!!」と心に突き刺さる講義を受けながら、ふっと勝手に自分にとって、「辛くて苦しかった失敗エピソード」として封印していたはずの「その日」の出来事が、走馬灯のように私の頭の中をぐるぐる回り始めました。きちんと思いを伝えてくれている、涙をこらえて私に気持ちを教えてくれた方に対し、私はなんてことをしてしまったのか・・・私にとって「その日」が辛いエピソードとなったように、ご本人にとっては、もっともっと辛い、苦しい、わかってもらえなかった、誰もわかってもらえない、「私の方が苦しい!!」・・・そう言われた気がして、血の気が引いた感覚を覚えました。訪問看護の仕事の一環と割り切ってしまい、相手の気持ちを踏みにじったままで逃げていた自分が恥ずかしくなり、心が震えた気がしました・・・「答えのないこころの問題と向き合うことができたのか・・・」学びの中で、こうすればよかったのか?あーすればよかったのか?研修中に必死に答えを見つけようとしていた自分がいました。相手の気持ちに向き合うことができず、苦しみに気が付く方法も分からなかった自分に、研修の内容は素直に、すっと心に入り込んでいったのが良くわかりました。傾聴・沈黙を学ぶ中、相手が苦しむことに気が付けなかった、相手の悲しみに気が付けなかったそんな私に、「たった一人でも自分の苦しみをわかってくれる人がいると感じた時に自分を認め穏やかさを取り戻す可能性はある」と言ってくれた小澤先生の言葉に、気持ちが軽くなった感じがしました。「その日」の過去には戻ることができない・・・でも今後の私の、これからに対し、人は変わることができるし、まだまだ勉強することができる・・目の前が少し明るくなり、そっと手を合わせている自分がいました。

 

小澤先生の、お言葉そのまま、真似をさせて頂くと、
「それでは聞いて頂きましょう~」
AIで【 Story 】
「時がなだめてく 痛みと共に流れてく 日の光がやさしく照らしてくれる」


いまから、これからの自分の看護人生が変われるように・・・
支えてくれる人がいるから、頑張れる。
大切な人を支えることで、頑張れる。

 

これってすごく前に進める、力がみなぎる呪文ですね!!

 

「やっと私なりの答えが見つかった」

 

ずーーーーんと重たかった大きな岩が、少しずつ砕けていって、
研修に参加したことで、
長年悩んできたことに、そっと手差し伸べてもらった、頭をよしよししてもらった・・・
そんな気がします。

 

ご紹介いただいた、宇田先生。そして出会っていただいた講師の方々、本当にありがとございました!


私らしくこれからを歩むことに応援歌と共に、そっと背中押して頂きましたことに感謝いたします。
 

エンドオブライフ・ケア協会では、このような学び・気づきの機会となる研修やイベントを開催しております。活動を応援してくださる方は、よろしければこちらから会員登録をお願いします。

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