暮らす看護ホスピス もかの家 看護師
成瀬 恵美さま
(ELC第155回生)
私は、がんの闘病で苦しんでいる患者さんと関わった時の無力感から、専門的に緩和ケアを実践したいという気持ちで、緩和ケア認定看護師になりました。今は古民家をリノベーションした在宅ホスピスで働いています。
これまでに多くのがん患者さんと関わらせていただきましたが、自分の関わりとしての核となるものがはっきりしておらず、正解はないとしても、答え合わせができない状況でもあり、自分の関わりはよかったのだろうかと思い出されるようになりました。
人生の最期を過ごす方々に、自信をもって寄り添うことができるような支援者になりたいと思い、『エンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座』を受講しました。
苦痛や苦悩を抱えた方に対して、苦しみの原因を分析、考察して問題点を抽出し、問題が解決するための方策を考え、実践するというやり方をしていました。たしかに、これも重要ではありますが、関係性を構築するのがうまくかないと感じることもありました。しかし、それがなぜうまくいかないのかという答えを見出せずにいました。
私は『解決してくれる人』になろうとしていたんだと思います。
一番印象的だったのは『たとえ解決が難しい苦しみを抱えた方を前にしても、自信を持って関わり続けることができる』というフレーズでした。なんて心強い言葉なんだろうと思いました。
人生を問うこと、支えてくれたものを再認識すること、これからの安心を見出して、支えを強めること、これらのことを講義やロールプレイを通して、学ぶことができました。その人全体を見る視点としてとても大切であり、そしてそのプロセスがわかってもらえる人だと思ってもらえる関係性構築につながるのだということがわかりました。
肺がんで予後2週間という状態の女性は、脳出血後の高次機能障害があり、うまく自分のことを話せない方でした。決して「苦しい」「しんどい」とは言われず、不安を表出されることもありませんでした。私は、この方の苦しみというものは何なのか?ということを意識して、短いフレーズで発せられた言葉を反復するというコミュニケーションを図りました。
すると、一人で過ごすことが寂しいという思いをもたれていて、支えとなっているものは家族であることがわかりました。家族の話題が増え、家族とともに過ごす時間が持てていたある日、私の手を握って「顔を見ると安心する」と言ってくださいました。見た目にはとても息苦しそうな印象でしたが、とても穏やかな表情をされていました。
『あなたの苦しみをわかろうとしています』というメッセージが伝わり、この方にとって、私のことを「わかってくれた」と思っていただけたのだと実感しました。
苦しみに気づくというトレーニングを続けていき、できること少なくなっていく方が、限られた時間を穏やかに、そして豊かに過ごしてもらうための支援者になりたいと思っています。
エンドオブライフ・ケア協会では、このような学び・気づきの機会となる研修やイベントを開催しております。活動を応援してくださる方は、よろしければこちらから会員登録をお願いします。
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