みんなのクリニック大井町 院長、プライマリ・ケア連合学会 家庭医療専門医・指導医、認定ELCファシリテーター
年森 慎一さま
(ELC第159回生)
私は家庭医です。いわゆる「昔ながらの町医者」というやつです。赤ちゃんからお年寄りまで、産前相談から緩和ケア・看取り・グリーフケアまで。年齢やジャンルを問わず、心・体の問題を問わず対応する、プライマリ・ケアの専門医です。
何でも診るといっても、何でも解決できるわけではありません。プライマリ・ケアの診療所に受診する患者さんの訴えの50%は答えがないとも言われています。私たちは日々、答えのない苦悩と向き合っています。
そんな不確かな世界と向き合うためのトレーニングを家庭医として受け、実践してきました。しかし、答えのない苦悩と向き合うことはそれでも大変で、感情に揺さぶられたりして、関わり方の安定感をだすことはなかなかの苦労を感じていました。また、家庭医として学び実践している関わり方はとても有用で、少しでも多くの人に伝えられるといいな、伝えるにはどうしたらいいのかな、と感じていました。
年に1度、開催される私たち家庭医・総合診療医の学会「プライマリ・ケア連合学会」が2024年6月に浜松で開催されました。たまたま参加した小澤先生のセッションで、エンドオブライフ・ケア協会の活動のこと、ユニバーサル・ホスピスマインドのことを知りました。その時の「これだ」という感覚はよく覚えています。わかりやすく、シンプルで、再現性がある。もちろんトレーニングや慣れは必要ですが、援助者にとっての大切な考え方の軸・支えとなるものだと、直感的に確信し、そのままの勢いで援助者養成基礎講座に参加しました。
講座に参加して、自分が日々行っていたことの解像度が上がり、さらに意識的に行えるようになったと感じています。より「わかってくれる人」になるための援助的コミュニケーションや、より「支え」を意識した関わりができるようになったと感じます。そして何より、ユニバーサル・ホスピスマインドが、援助者である私自身を強くしてくれる大切な考え方の軸・支えの一つとなったと感じています。
“ヒーローがつらい時、誰がヒーローを守ってあげられるだろう”
『僕のヒーローアカデミア』という作品に出てくる、麗日お茶子という女の子の言葉です。
身を削って人々を助けようとするヒーロー。己の力の及ばなさや周囲の不理解に苦しみ、心が折れそうになることもある。自身もヒーロー候補生である麗日は、人々のために必死に自分の身を削って頑張るヒーロー達を見て、そのヒーロー達を支えたいと強く思います。
私はこの言葉、この場面が大好きです。
“誰かの力になりたい” “誰かの役に立つ仕事がしたい”
こんな原点が、私たち医療者をはじめとした対人支援職にはあると思います。きっと、誰かのヒーローになりたかったのかもしれません。
しかし、ヒーローにも支えは必要です。幸いにも私は、支えの一つとなるELCの活動やユニバーサル・ホスピスマインドに出会うことが出来ました。正解があるかもわからない不確かなこの仕事・世の中において、ELCでの出会い・学びは、私たちがヒーローであるための支えとなるものであると感じています。
私たちが誰かにとってのヒーローであるために、また、世界で奮闘する孤独なヒーローに、そしてこれからヒーローになるだろう人たちに、ユニバーサル・ホスピスマインドが届くことを願っています。
エンドオブライフ・ケア協会では、このような学び・気づきの機会となる研修やイベントを開催しております。活動を応援してくださる方は、よろしければこちらから会員登録をお願いします。
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