コラム139:施設で働くわたしにできること

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特別養護老人ホーム 看護師 

伊藤めぐみさま

(ELC第198回生)

施設看護師として看取りに関わる毎日を送っています。入所されるご利用者様の多くは、認知症があり、終末期を迎える頃には意思の確認が難しい現実があります。看護師として目の前の方に向き合えていたのか、どこかでご家族の納得を優先していなかったか、そんな思いが残りました。


いま何かを学ばないといけないと焦りながら、オンラインでエンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座の参加を決めました。 受講までは「在宅と施設ではできることが全く違うのではないか」と思う気持ちもありました。


否定しない接し方が良いとわかってはいても、「家に帰りたい」「お風呂に入りたくない」「ご飯はいらない」 と話される日常の中で、継続していくことは簡単なことではありません。 看取りに関わらず、反復と沈黙で丁寧に話を聴いていると、ゆっくり落ち着かれていくことが目の前で起こるようになりました。


施設に入所されると、ご利用者様と私は「ケアを受ける人」と「ケアをする者」 として出会います。 実践を続けていくと、居室で二人きりになる時間は、「いま、あなたと私が一人の人として向き合っている」 と感じるようになりました。


何を話しても大丈夫、内容を評価しない、最後まで話を聴くことを大切にしたい、そう思っていると、今まで知らなかった思いを話してくださることもあります。


その中で、施設の良いところは、同じご利用者様の顔を、毎日見ることができるところだと思うようになりました。 もし昨日の会話を憶えていなくても、「今日もお話ができる」「良かったら昨日の続きを話しませんか」 と言うこともできます。


また、ご家族と離れて暮らすご利用者様にとって、私たち職員は大きく影響する存在だと気がつきました。

  
 「今までできていたことができなくなって辛いけれど、いま話をするのが楽しい」 
 「介護の〇さんが、私がうまく食べられない時におにぎりを作ってくれた。

 全部食べると、 『僕が作ったおにぎりを全部食べてくれてありがとう』 と言ってくれてね。

 ありがとうを伝えたいのは私の方なのに、自分のことのように喜んでくれたのがおかしくてね。

 私、嬉しかった」 

 

とご利用者様が職員について話してくださることがありました。


その職員や私にとっても素直に嬉しい出来事でした。時には、職員に直接ではなく、私が間接的にお聴きすることもありますが、その場合、職員には、 「こんな風に聴いたよ」 と伝えることもできます。そしてご利用者様とその職員の関係は深まり、私とその職員の関係も深まります。


聴くことが、ご利用者様と私の二人の関係から、少しずつ外へ広がっていく可能性を感じるようになりました。 入所から時間が経ち、今までできていたことができなくなっても、信頼して任せられる人が近くにいることは、きっと大きな支えになります。 そういった存在になれる職員が増えていくと良いと思います。


聴くことは、ご本人との関係だけでなく、ご家族との関係にもつながっていきます。 利用者様について伺う機会はあっても、今までご利用者様にご家族への思いを聴くことを意識したことはありませんでした。


今までの人生の中で何を大切にされてきたのか問いかけていくと、今は離れていても、自分の中に大切にしてきたものがあることに気がつかれるときがあります。 時間の認識や年齢が合わなくても、大切にしてきたことはちゃんと憶えていると感じます。


どこかにつながりがあり、お互いを大切に思っていることや、その気持ちがこれからも続いていくことを知ることで、最期の時が近づいても穏やかになれるのだと感じます。


これからは、そのご利用者様の思いをご家族に伝えていけたらと思っています。 ご本人の気持ちを大切にした最期のときを支えるために。 いまは目の前の方のお話を聴きながら、この毎日に向き合っていきたいと思います。

 


 

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