コラム143:これまでも これからも ひたむきに

  • わかってくれる人がいるとうれしい
  • 支える人の支え
  • 尊厳
  • 解決できない苦しみ

山口県立総合医療センター 看護師長

小川 佐知子さま

(ELC第42回生、認定ELCファシリテーター)

運命を感じたELCとの出会い
私が小澤先生に出会ったのは、2017年10月に開催された「在宅緩和ケア講演会」の時でした。恵まれたことに、ロールプレイの患者役のご指名を受け、小澤先生のケアを最も近い場所で学びました。当時の上司と一緒に涙を流しながら講演を聞いたことを、鮮明に記憶しています。

 

日々の忙しさに疲れ、看護師として何も出来ていなかった無力感を抱えている中で、こころが放たれ光が見えた瞬間でした。私は、その光が何かを知りたくて、5ヶ月後にめぐみ在宅クリニックで一日研修を申し込み、エンドオブライフ・ケア協会の研修を受講しました。

                                

ゆるぎない信念
私は、高度急性期病院で緩和ケアの実践を行っています。24年前に、がんと診断されたった3ヶ月で他界していった祖母への後悔が強く、『住み慣れた土地で、家に帰りたくでも帰れない状況』におかれている方々の孤独と向き合っていきたいと思っているからです。

 

でも、思いだけでは、当然、道は険しく、さらに新型コロナウイルス蔓延により、たくさんの人が孤独に亡くなっていく状況の中で、私自身が「穏やかに生きること」の意味さえも失った時間もありました。そのような中、ELCの「一年間の振り返り」報告を書く機会や小澤先生が執筆された本を読み返す時間は、私自身を『支える』大切な時間となっています。


実践こそ最大の学び
先日、慢性心不全の治療が難しい60歳代男性患者と関わる機会がありました。死を目の前に「死ぬ前の患者のところにきて嘲笑っているのか」「もう来なくていい」と発する言葉の裏には、寂しさと孤独感があふれていました。私は拒否をされても、分かってもらえる人になることを諦めず、「丁寧に反復すること」「沈黙を守ること」「質問をすること」「支えを聞くこと」をいつものように実践しました。

 

すると、2回目の訪室の時、幼い頃から人との関係がうまく作れなかったことや、眼も見えず体も動かなくなることに希望を抱けないことを話してくれました。「支え」について触れると、「大したことない」と言いながらも、趣味や家族・友人のことを語り、その瞬間、表情が穏やかになられました。そして私の話も聞いてくれました。置かれている状況は何も変わらないけれど、たった一人でもつらい状況を知ってくれたことが嬉しかった、と言って下さいました。孤独の時間を、ほんの少しですが和らげることが出来たことに、こころからホッとした瞬間でした。

 

私もひとりじゃない
私が、つらい状況に置かれている方と向き合えているのは、やはり私を支えてくれる人達の存在があるからだと思います。自分のこと以上に心配したり怒ったりしてくれる家族・友人、抱腹絶倒させてくれる何でも話ができる仲間、退職しても的確にアドバイスをくれる元上司、何よりつらくても誠実に生きようとされている患者・家族の姿は、自分が頑張れるエネルギー源となっています。『私もひとりじゃない』そう思わせてくれている多くの人達に感謝する日々です。


エンドオブライフ・ケア協会では、このような学び・気づきの機会となる研修やイベントを開催しております。活動を応援してくださる方は、よろしければこちらから会員登録をお願いします。

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