一般社団法人幹 ケアプランセンター幹はうす 介護支援専門員
北田 千惠さま
(認定ともにんファシリテーター)
エンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座受講前から始めていたグリーフケアの学び、グリーフケアカフェでは、喪失感でいっぱいになっている方が、毎回、語りを大切に聴くことで、哀しみを抱えたまま、普段の生活に戻れることを目のあたりにし、「聴くこと」の大切さを実感していました。また、その学びから、グリーフが、死の別れだけはなく、普段の私たちの暮らしの中にもあること、認知症の症状による「今までの自分ではない」ご本人・ご家族の喪失感も、グリーフであることを意識するようになりました。
聴くことを大切にしているエンドオブライフ・ケア協会援助者養成講座は、2017年6月に初めて受講、今も、毎回気づきや学びを得られ、自身の継続学習に繋がっています。
認知症については、専門的に学んだわけではありません。介護の仕事をする上で、たくさんの認知症のあるご利用者様と接してきました。どうすれば、認知症のあるご本人はもちろん、ご家族や周りの方が穏やかに過ごせるのか。そのひとつとして、周りの理解が大切なのではないかと考え、「認知症と生きることを共に考える にじいろカフェ」を地域の仲間と始めました。
開催後、認知症カフェについて学ぶため、認知症カフェモデレーター研修を受講しました。そこで、『あなたのなかに認知症への偏見があるのでは』という問いをいただきました。それは講義の中で、「認知症カフェという名称を使っていない」と話し、理由は認知症のある方のご家族が、「認知症カフェという名称がついていたら行かない、行きたくない」とのエピソードからであると話した際、講師から、ご指摘をいただきました。それをきっかけに自分のなかには、偏った先入観があるんだと考え続けています。
研修後は、名称とプログラム内容を変更し、現在はオンラインで「大切に聴く、大切に語るカフェ」として活動しています。11年間、対話を繰り返すなかで、自分のなかの「認知症のイメージ」が変化してきたことを感じています。それは、私だけではなく、他の実行委員からも聞かれています。
こうしてカフェや学びを通じて、『聴くこと』が大切だと理解していたつもりでした。それでも実際の仕事では、自分のなかのまだまだ偏った見方があることに気づき、痛感することがあります。
Aさんは、疾患発症から随分経った方で、険しい表情で会話は成り立たず、大抵のことは『通じない』と思いこんでいました。とある日、入院をきっかけに、精神科の転院が検討されたことがありました。支援チームで、お家に帰れるよう院内で話をして、退院できたAさん。お家に戻ると、何度も何度も家族写真を指さして、私たちに笑顔を見せてくれました。「Aさんは、わかっているんだ…」と感じ、嬉しいのと、それ以上に申し訳ない気持ちでいっぱいだったことを覚えています。
Bさんは、毎回、決まったことをお話されます。ある日、いつも怒るご主人に、ハッキリ自分の意見を言い放ったことがありました。「わたしは、〇〇したい。したくないと思うのは、お父さんやろ。」と。言われたご主人は驚いていたと、ヘルパーさんから聞いた私も啞然としました。この時も、私は、ご本人のお話を本当に聴こうとしていたのかと自分のふるまいを振り返った記憶があります。
今年、認知機能が低下してきている高齢の母と暮らし始めました。忘れていくことをわかっていて『不安だ』と口にすることもあります。料理の時間は、毎回私に、不安な顔で味付けを聞きます。私も、全て任せることができず、必ず自分が横にいるときにしか、料理をしてもらうことはありません。ある日、自宅でのオンライン研修後、「そうめん用意したよ」と、嬉しそうに出したお素麺は、とっても美味しく、お素麵さえもひとりで湯掻けないと思っていた私は、また、自分のなかの『できない』という決めつけ・偏見を改めて認識し、自分が情けない気持ちになったのでした。
「認知症がある」という情報や、「認知機能の低下」を感じると、しばしば私達は、勝手なイメージを、自分のなかの根強い偏見・先入観から、創り上げてしまっていることをふりかえらなければなりません。
2026年から始動した『ともにん』の内容には、『自分ごとで考える』、『わかってくれる人になるために聴くこと』、『大切な支え』を大切にする内容が入っています。そして、周りの近しい支援者、ご家族は、ご本人の声を聴くことが大切だとわかっていても『できない』こともあることが、盛り込まれています。ご本人にも、ご家族にも、支援者にも、その周りのひとが『聴いてくれるひと』、『わかってくれるひとに』になってくれたなら。難しいことではなく、ほんの少し、心を寄せて気にすることで、穏やかに過ごせる人が、今よりも多くなる。
社会は、私たちひとりひとりが創っていて、お互い、ほんの少しできることをするだけで、変われる可能性があると思っています。きれいごとと言われるかもしれないけれど。
わたしたちひとりひとりが心を寄せれば、社会が変われば、認知症のことだけでなく、もっと、生きやすく、想いあえるひとが多い世界に変わるのだと信じたいのです。そうすれば、AさんもBさんも、伝えたいことを伝えやすい世の中になるのかもしれない…と願いをこめて。これから、ユニバーサルホスピスマインド、『ともにん』の活動も、全国の仲間とともに続けていきたいと思います。

エンドオブライフ・ケア協会では、このような学び・気づきの機会となる研修やイベントを開催しております。活動を応援してくださる方は、よろしければこちらから会員登録をお願いします。
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