私は医師19年目になります。私は昨年、兵庫県北部の地元で在宅クリニックを開業しました。 私は、これまで外科医、救急医として、「目の前の人の命を救うこと」を使命に歩んできました。病気やけがを治すために何ができるかを考え続けた日々でした。今振り返ると医師としての「バージョン1.0」の時代です。 しかし一方で、救命だけを望んでいるわけではない患者さんやご家族と出会い、「本当に求められていることは何だろう」と考えるようになりました。そして、病院…
コラム140:いのちについての学習を行うための器つくり:1998年から2006年までの歩み
~前書き~ 小松良子先生は、小学校の養護教諭として学校現場でご活躍される中で、同僚の先生方、子どもたちと『いのちについての学習』に取り組んでこられました。エンドオブライフ・ケア協会の『折れない心を育てる いのちの授業』プロジェクトが立ち上がる際にも多くの示唆をくださいました。「授業で学んだことを生活の中で行動したり、できたことを認め合ったりするためには、学級で、学校で、地域での器の存在が必要」とおっしゃる、小松先生の長年の教育実践から学…
私は家庭医です。いわゆる「昔ながらの町医者」というやつです。赤ちゃんからお年寄りまで、産前相談から緩和ケア・看取り・グリーフケアまで。年齢やジャンルを問わず、心・体の問題を問わず対応する、プライマリ・ケアの専門医です。 何でも診るといっても、何でも解決できるわけではありません。プライマリ・ケアの診療所に受診する患者さんの訴えの50%は答えがないとも言われています。私たちは日々、答えのない苦悩と向き合っています。 そんな不確かな世界と向き…
私は現在、愛媛県松山市内の地域包括支援センターで社会福祉士として働いています。 お彼岸も過ぎ、訪問途中に見上げる松山の空に浮かぶ雲も、秋の雲が主役となり季節の移り変わりを知らせてくれています。今回は、大阪市内で援助者養成基礎講座を初めて受講した、2019年3月から現在までに出会った中でも、特に印象に残っているAさん家族との関わりについて振り返ってみたいと思います。 なぜ、印象に残っているのかと自分の中で振り返ると、出会った直後はAさんの…
コラム94:医師として治せなくても「わかってくれる人」に、私はなりたい
出会い 14年ほど前、松山市医師会主催の講演会でのことです。医師として私の人生に大きな変化が訪れました。当時の私は、大学病院から父の診療所に帰り、在宅医療を始めたばかりでした。在宅緩和ケアをしたくて地域医療を選んだのに、自分が役に立てているのか不安でいっぱいでした。 何が不安なのか?目の前で苦しむ患者さんが吐き出す言葉に、答えがみつからないのです。 「なんで、自分がこんな病気になったのか?」 「もっと治療したかったのに、主治医にここを紹…
コラム84:PTA・いのちの授業コーディネーター・親としての三つの視点から取り組んだこと
私はこれまで、実際に悩む中学の娘と一緒に「折れない心を育てる いのちの授業」を数回受講しました。娘は、何に悩んでいるのかもわからなくなるほどふさぎ込んでいましたが、この授業を受けるたびに、一つ一つ気持ちを伝えてくれるようになりました。 藁にもすがる思いで受けたあの日、娘は、隣にいるのにパソコンの画面にも映るのを嫌がりながら、言葉ではなくショートメールで、「テストでいい点を取りたい。でも取れない」「部活でいい成績を残したい。でも部活を辞め…
1. ELCとの出会い 私が初めて学習会に参加したのは、2019年の夏、長崎県で当時から活動していたELC(エンドオブライフ・ケア)波佐見による学習会でした。 基礎職が福祉職の私は、もともと看取りに苦手意識があり、「自分の知識でわからないことを質問されたらなんて答えよう」「間違ったこと回答して医療職から怒られたらどうしよう」そんな風に思っていました。 市内の地域包括支援センターに勤務している一ノ瀬さんからの誘いもあり、ELC波佐見の学習…
コラム73:いきかた〜生きかた・活きかた・逝きかた〜を支える地域であるために
あたりまえは、あたりまえではない。そのことに気がついた時には、あなたはすでに何かを失ったり、まわりで変化が起きたりしてしまっていることが多いのではないでしょうか。あたりまえがあたりまえではなくなったとき、人は大きなストレスを抱えますし、それは社会も同様です。まさしく、今のコロナ禍においては、誰しもが感じていることかもしれません。 しかし、このことは普段から身の回りにあることなのです。私は9年前に父を突然失いました。私の故郷である唐津市七…
コラム71:問いを立て、集い、共通の目的を持って共に動き出す
私は、大阪市北区で司法書士の業務を行いながら、ELC東大阪の一員として活動しています。 ELC東大阪は、かわべクリックの川邉正和医師、川邉綾香看護師を中心とするグループで、私は法律専門職のエンドオブライフ・ケア援助士として参加しています。 今回は、「非」医療・介護職である私が、人生の最終段階にある方の支えとなることが出来た事例をご紹介します。 その方は、わが子として一緒に暮らしている「犬」を自分が亡くなった後に誰かに引き取って欲しいとい…
つい半年前の常識が、まったく通じない世の中になりました。本当であれば、今頃はオリンピック・パラリンピック開催にむけて、世界の人達が日本に来る準備で慌ただしかったことでしょう。海外からの旅行客が日本の経済を押し上げる夢も、あっという間に消えてしまいました。 いつも心に留めることは、時時代の2歩3歩先を読み、1歩先の行動を起こすことです。 普通に考えれば、オンラインでのサービス拡充で、リモートワークが広がり、働き方そのものも変わることが予想…
今日は、久しぶりに休日診療所にて、外来を担当しています。驚くことに、今まであたりまえに受診されていたであろう感冒の患者さんが、ほとんど来院されません。 売薬などで、自宅で静養されているのかと思われます。休日診療所の役割は、あくまで平日に診療をされているかかりつけ医の代診なので、処方をしても1日分程度なのですが…。今は不要不急の診察も自粛のようです。 休日診療所であれば、患者さんは少なくても良いのですが、これが飲食店やホテル業界であれば、…
今から6年前、クリニックで企画した研修が、今のELCの活動のきっかけになりました。 あれから6年、世の中は新型コロナウイルスのために大変なことになりました。でも、この時のために活動してきたように感じます。1日1日を大切に、必要としている人に届きますように。 小澤 竹俊
新型コロナウイルスは、私たちの日常を一変しました。今までのあたりまえの生活が、あたりまえではなくなりました。映画を観ることも、友達と会うことも、集まって学ぶことすら許されない非日常です。春から仕事に就く予定であった学生が、内定取り消しの一報をうけて途方に暮れる人もいます。 では、ここで1つの問いをだします。この中で、果たして誰が一番苦しいのでしょうか? 1.内定取り消しの学生 2.オリンピック開催の準備をしてきた人 3.大好きなグループ…
新型コロナウイルス対策のため、さまざまな自由が制限されています。生きていくために必要な仕事ですら自由に行えず、途方にくれる人も少なくありません。これからどうなっていくのか、先が見えない不安のため、心身共に疲労している人も多いことでしょう。 新型コロナ・ショックで麻痺している社会に私たちができることを提案していきたいと思います。いのちが限られる理不尽で不条理な苦しみを抱えた人への援助を学び、関わる担い手を増やす活動をしてきました。その対人…
<防災タイムラインの必要性: なぜコロナと巡り会うのか、私たちは何も知らない いつコロナと巡り会うのか、私たちはいつも知らない>
新型コロナウイルス感染は、いよいよ医療・介護施設での集団感染のステージに入ってきました。病院や介護施設は、脆弱な高齢者や重症化しやすい基礎疾患を持った人が集まる場所であるため、ここでクラスター形成は、健常な人達が集まる会場でのクラスター形成とはニュースの意味が異なります。 今は人混みをさけ、なるべく感染が広がるスピードを落とすこと、もし体調が悪ければ外出を避け、自宅で安静にすることが大切です。しかし、私たちに今できることはもっとあります…
新型コロナウイルス感染を防ぎ、クラスター予防のため、週末の外出が自粛することが求められています。自由に集まり、誰かと会うことができなくなりました。楽しみにしていた映画にも行けず、好きな人とお気に入りのレストランで食事をすることも自粛しないといけません。まるで会うことを禁じられたロミオとジュリエット。 その一方で、今しかできないこともあります。一生で一回しかない孫の卒園式、限られたいのちを生きている人との時間、たぶん、来年は観ることのでき…
コラム65:「折れない心を育てる いのちの授業」の源流から 浄土真宗本願寺派 走井山善西寺 住職 矢田俊量さま (ELC第6回生) ここは三重県のとある小学校。創立百二十周年記念の講演会。会場の体育館には、幼稚園児、小学生児童、教職員、保護者があつまり、熱心に講演に聞き入っている。講題は「ホスピスから学ぶいのちの授業」。講師は横浜甦生病院緩和ケア医長・小澤竹俊先生。皆様にはいわずとしれた、現、ELC代表。今から16年前の秋のことである。…
不条理な今を生きていくこと その9:苦しんでいる人は自分の苦しみをわかってくれる人がいるとうれしい
本来であれば春が近づき、桜の開花がいつになるのか話題になるこの時期ですが、今年は新型コロナウイルス感染のニュースで、先行きが見えない状態となりました。まさにVUCAな時代そのものです。 不条理な世の中にあって、いろいろなことを決めていく難しさ、特に決断する人は、その責任を負うことになります。どちらを選んでも後悔する選択にあたり、わかってくれる誰かの存在が鍵となります。 皆さんは自分自身の悩みや苦しみをわかってくれる人はいるでしょうか?私…
コラム64:苦しみの中から支えに気づく文化 皆が穏やかに暮らせる世の中を作るために (2)
コラム64:苦しみの中から支えに気づく文化 皆が穏やかに暮らせる世の中を作るために(2) 沖縄県立中部病院 呼吸器内科/地域ケア科 長野宏昭さま (第1回ELCin沖縄受講生、認定エンドオブライフ・ケア援助士、認定ELCファシリテーター) ※前半はこちらからお読みください( https://endoflifecare.or.jp/column/20200127-1 ) ・若手医師の育成 私の働いている沖縄県立中部病院は初期臨床研修のメッ…
コラム62:地域ケア会議で事例検討 橋北在宅介護支援センター 看護師 鈴木 裕美さま (ELC第14回生、認定エンドオブライフ・ケア援助士、認定ELCファシリテーター) 現在、四日市市内にある在宅介護支援センターに勤務しています。四日市市は人口31万人。私が勤務する橋北地区は、万古焼を産業として栄えた地域ですが、工場の閉鎖とともに人口が減少し、街の中心部でありながら高齢化率が高い地域です。四日市市の高齢化率が25.6%に対し、橋北地区は…
地域互助力向上ネットワーク 0-100(ぜろひゃく)地域の輪 代表 中島 直子さま 私は北海道生まれの父と九州生まれの母に生を受け神奈川県相模原市で生まれ育ちました。こもれびの森という森林が近くにあり、成人するまでの様々な思い出と共にその風景も思い出されます。両親の活動の関係で暮らしは赤ちゃんから高齢者までが定期的に集い、地域が家族のような環境で育ちました。 高校1年の冬、1年半の闘病の末、父が亡くなりました。その2か月前には父方の祖母…
コラム56:「自分なんかもういい!」なんて言わないで、しなやかに生きる力を
我が家の庭のあちこちにビオラの花が咲いている。前年のタネが落ちて春に芽を出すが、もう5年繰り返されている。自分の場所に安堵したかのようにたくましくそれぞれの育ちをしています。「いのちの学習」を通して、子供達から青年、成人、老年、そして最期を迎える時まで、それぞれの場所で、ビオラのように安心して穏やかに過ごせるような環境づくりとしなやかに生きる力をはぐくみたいと思います。 私の「いのちの学習」の原点は、小学校6年生M子との出会いでした。 …
このコラムは、 ディグニティ・セラピー の一環として、ご本人が大切にしてきたこと・伝えたいことを口頭で伺い、ご本人の言葉を活かした形で記録・編集したものを、後日ご家族とともにご本人に確認していただいたものです。子どもたちをはじめとして、次の世代へ伝えるメッセージとして、ペンネームで掲載することをご承諾いただきました。 生涯教育者として 人生において、様々な役割を担ってきましたが、生涯変わらないことは、教育者であるということです。大切にし…
「私って必要ないのかな。」 私がよく感じた思いです。幼少期から自信がない子だったような気がします。決して家族から愛されていなかったわけでも、友達がいなかったわけでもありません。自信がなくなるきっかけは引っ越しでした。 私が幼稚園年中の時、親が祖父母との同居を決めました。小さい頃から団地で遊んでいた友達と離れ、引っ越し先では人見知りも災いして中々友達ができませんでした。 友達ができない自分、私は自分の存在がいらないものに感じました。ただ長…
コラム53:かかりつけ医から地域へ広げるエンドオブライフ・ケア
はじめに ELCとの出会い 子供へ認知症について伝えること いのちの授業への関わり 最後に 【はじめに】 父がこの地域、喜入で開業して54年という月日が経ちました。地域のかかりつけ医として武家屋敷跡を使って外来を始めた頃から在宅看取りを行っていたそうです。私は名古屋で医師となり、呼吸器内科医として活動する中で実家に帰る予定はなかったのですが…ずっと昔からの目に見えない「地域との絆」を感じた瞬間に“私しか出来ないことをするべきである”と直…
みんなの保健室 陽だまり 代表 服部満生子さま (ELC第37回生) みんなの保健室 陽だまりは、草加市内をエリアに4箇所で月8回活動している保健室です。つまり拠点を持たずに駅近の喫茶店・薬局のフリースペース・空き家(社協借用)・草加市市民活動センターに出向いて保健室を開催しています。地域住民の方々が、参加しやすい場所、参加できる時間にふらっと訪ねることを狙いとしています。 モットーは、大人から子どもまで、障害や病気の有無に関わらず誰で…
公益財団法人 東京都医学総合研究所 心の健康プロジェクト 主席研究員 中西 三春さま ◆認知症と共に生きる人のための緩和ケア 私は東京都関連施設の研究員として、東京都の委託を受けて認知症ケアプログラムの開発に従事しているほか、海外研究者との共同体制で認知症と共に生きる人のための緩和ケア(認知症緩和ケア)のあり方を研究しています。 緩和ケアにおいては痛みがないこと、快適さを最大限に高めることがケアの重要な目標とされています。しかしご本人が…
NPO法人 HALAW(ホッカイドウ・アニマル・ロー)代表理事 行政書士 オフィス プライム・アイ 行政書士/動物法務士/愛護動物取扱管理士 (ELC第44回生) 今井 真由美さま ●ペットも命ある大切な家族 一昨年ある雑誌に「ペットは第5の家族」という記事が掲載されました。 ※親・兄弟姉妹・配偶者・子どもそして第5にペットと呼ばれています。(週刊東洋経済2016.9.10号) 長きに渡り家族の一員として暮らすペットは伴侶動物、あるいは…
私とエンドオブライフ・ケアそして小澤竹俊先生との出逢いは、2017年7月29-30日に名古屋で開催された援助者養成基礎講座が最初であった。にもかかわらずその日のうちに「この地域のファシリテーターや講座修了者の拠り所となる事務局を担当します」と名乗りを挙げたのである。 それは講座内容から受けた感銘と、この地域には活動をする人々を受け止める事務局がないことへの驚きから生まれたひらめきであったが、この感銘には二つの前提条件が存在していた。 そ…
コラム32:仲間に支えられ、今がある ホームケアクリニックえん(訪問リハビリテーションえん) 作業療法士 杉田賢二さま(ELC第12回生、 認定エンドオブライフ・ケア援助士 ) 岩手県県央部に位置する北上市は、人口約93,000人から成る県内5番目の市です。今年も含め「住みよさランキング」8年連続県内1位という評価をいただいている市で、桜の名所「展勝地」や郷土芸能「鬼剣舞」は観光名物になっています。 住みよい街と評価される当市でも、高 …
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